似顔絵にまつわるエピソード(その24)|似顔絵の描き方が驚くほど上達する方法

(※「似顔絵にまつわるエピソード(その23)」の後日談です)

その後、彼女が無事似顔絵師になれたのかどうか、知る由もなかった。

あれから、何度かデート(っぽいもの)はしたものの、それ以上に関係が進展することもなく、ほどなくして彼女は、絵の勉強と称して海外に移住してしまったのだ。

関係を進められなかった自分の不甲斐なさと、明確な移住先も知らせぬままに半ばこっそりと海外に行ってしまった彼女の身勝手さ(と、当時は考えた。正式に付き合っていた訳でもないのだから、伝える義理など無いのであるが・・・)に嫌気を起こし、彼女のことは潔くきっぱりと諦めたつもりでいた。
そう、つもりでいたのだ。

数年後、IT系の企業に就職した僕は、いわゆる「ネットサーフィン」をして、あらゆる情報を収集するのが日課になっていた。

そんなある日、いつも通りリンクを辿り、様々なWEBサイトを閲覧しているうち、とあるページに行き着いた僕は、パソコンの前で呆然として、しばらく身動きが取れなくなってしまった。瞬きすることすら忘れるとは、まさにあのことだろう。

それは、彼女が自らの日常と共に、自分が描いた似顔絵を紹介する、ブログの一記事だったのだ。
それから数時間、僕はそのブログのすべての記事を貪るように読んだ。

「このブログがきっかけで、似顔絵のイラストを描く仕事も入ってくる」といった記述もあった。似顔絵師の正確な定義は分からないが、ある意味、どうやら夢は叶ったようである。僕は自分事のように嬉しかった。

見れば、ページの片隅に、「仕事のご依頼はこちら」といった文言と、彼女のものと思しきメールアドレスの記述があった。

その時、自分自身がどういう気持ちだったのか、実はよく覚えていないというのが正直なところなのだが、それなりの期待(下心と言われても仕方のないもの)を持って、メールを書いたのは間違いない。

「また、僕の似顔絵を描いてもらえますか。」

本文はシンプルにこの1行だけ、多くのメールに紛れてしまっても分かるように、僕の名前は件名(タイトル)に含めておいた。これで目に留まってくれればいいのだが・・・。



嬉しいことに、その日の夜、早速返事が来た。
同じく、本文はシンプルに1行だった。

「はい。ずっと、その時を待っていました。」

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