似顔絵にまつわるエピソード(その18)|似顔絵の描き方が驚くほど上達する方法

(※とある女性の手記です)
「似てないでしょ。これ、ぜんぜん似てないでしょ。」

突然だが、私は似顔絵を描くのが得意である。

だけど、モデルとなった本人に、描いた似顔絵を素直に認めてもらった記憶があまりない。私のキャラクターというのもあるかもしれないし、いや、それ以前に、そもそも私の似顔絵の実力がその程度なのかもしれないが、(とはいえ、第三者は概ね絶賛してくれるので)そういう元も子もない指摘はとりあえず置いておいて、皆少し恥ずかしそうな素振り(そぶり)を見せながら・・・だいたい冒頭のセリフが飛び出すのである。

ある日、誰かが職場に持ってきたミーハーな週刊誌に、売れていなくはないけど決してそれほどメジャーでもないという、芸能界でもおそらく微妙なポジションにいるであろうアイドルの、グラビア特集が掲載されていた。

その中の写真の一つに、カメラに向かってちょっとはにかむそのアイドルの顔が、誰が見ても職場の同僚の一人にそっくりだ、というものがあった。

たちまちその週刊誌の周りには人だかりができて(笑。仕事しろ!)、皆一様に「似てる、似てる」を連呼したのだが、当の本人だけは「似てないよー。似てないって。」の一点張り。恥ずかしがって頑として認めようとしない。

対象が微妙なポジションのアイドルだったからなのか、掲載されていたのがミーハー週刊誌でしかもグラビアだったからなのか、おそらくはそういったことも恥ずかしがる理由の一つではあったのかもしれないが、彼女の様子を見ていて、私はある程度の確信を伴って、一つの結論に至った。

その結論とは、人間というものが基本的に、自分に似ているものがこの世に存在すること、あるいはそれを認めることに対して、多かれ少なかれ無条件で「照れ」を生じてしまう生き物だということである。

それが、個性的でありたい、自分は自分でいたいといった、誰もが持っているエゴというもののせいなのか、それとも別の心理的な作用なのか、専門的なことはよく分からない。だけど、その日のその瞬間、それは今後も揺るぐことのない私の持論として、見事に確立されてしまったのである。

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