似顔絵にまつわるエピソード(その15)|似顔絵の描き方が驚くほど上達する方法

(※とある女性の手記です)
「ヘタウマ」という言葉がある。

技術的には決して優れてはいないのに、何故かウマいと感じさせてしまう何かを持っている様を表す言葉である。要するに、そのヘタさ加減が、逆にいい味を醸し出している様である。

彼の描く似顔絵は、まさに「ヘタウマ」だった。

一つ一つの線はふにゃふにゃだし、全体的なバランスも悪い。色使いも奇抜。単に一つの絵として観た場合、誰もが、決して上手だとは思わないだろう。

だけど、似顔絵として観ると、やっぱり似ているのである。そして、どことなく滑稽なその描き味は、一度観たら忘れられない独特な何かを持っている。印象的で、唯一無二とも言えるそれが、私は大好きだった。

ことあるごとに、私は自分の似顔絵を描いてくれとせがんだものである。一方で、普通の絵(似顔絵以外の風景画など)を描かせると、やっぱり決して上手くない上に、その独特な魅力も、似顔絵の時と比して半減、いや、それ以下に落ち込んでしまうと言わざるを得ない。要するに彼の「ヘタウマ」の味は、似顔絵でしか味わえないのである。

何故、と聞かれても、私には分からない。もちろん、彼自身も分かっていない。私に分かるのは、数ある種類の絵の中で、似顔絵は少々特別であるということと、「ヘタウマ」というものは狙って出来るものではないということである。

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