とある男性の方のエピソード。
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私と妻は、大恋愛の末に結婚したのだが、子供には恵まれなかった。
そして結婚10年目という節目を前に、妻は病気で突然逝ってしまった。
一人、本当にたった一人残された私は、妻の遺品もほとんど整理することが出来ず、そのまま数ヶ月が過ぎ去った。
ようやく、このままじゃいけない、妻のためにも強く生きると奮起し、遺品に手を付け始めたある日、一枚の絵を見つけた。
それは、男の子とも女の子とも見分けのつかない、だけどとても可愛い、そして何とも愛おしい、赤ちゃんの絵だった。
妻に絵の才能があることは知っていたし、描いた絵もたくさん見てきてはいたが、その絵は初めて見るものだった。
にもかかわらず、その絵に何となく見覚えがあるのは・・・それは、妻にも、私にも似ていたからだ。
恐らく、いつか生まれてきてほしい私たちの子供の姿を、妻が絵に表したものなんだと思う。
私は涙が止まらなかった。情けないことだが、この絵を見つけてしまったせいで、遺品の整理がさらにまた数ヶ月進まないことになった。
何があっても、この絵だけは守りたい。今では命よりも大切な宝物である。
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大変切ない話ですが、こんな形の似顔絵というのもあるんだということを教えてくれる、貴重なエピソードでした。