似顔絵にまつわるエピソード(その7)|似顔絵の描き方が驚くほど上達する方法

とある三十代男性の方のエピソード。
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先月、会社を退職した。

正社員として10年近く在籍していたこともあって、社内でもそれなりのポジションにはいたのだが、中小企業(というより零細企業)であるが故、みなそれぞれ多くの仕事を抱えており、正直私の退職などには忙しくて構っていられず、そんなことよりも増える仕事をどうしよう、という雰囲気が蔓延していた。

私にとっては二十代のほとんどを過ごした会社でもあり、それなりの思い入れはあったので、そういった周りの雰囲気を目の当たりにして寂しい気持ちはもちろんあったが、盛大に送り出されるのも何となく恥ずかしいし、過剰に引き留められても困るし、といったところで、逆にサラッと辞められて気がラクだ、くらいに思っていた。

最終出勤日も特に何事もなく過ぎ、いよいよ退社の時間。

突然、巻き起こる拍手。そこへ社長が、大きな額を持って現れた。
額の中は、誰が見ても私である。私の似顔絵である。後から聞いた話では、みんなで相談して、プロに頼んでくれたのだそうだ。
そして似顔絵の上には、たった一言、「Fight!」の文字。

私は涙が止まらなかった。みんなも一生懸命拍手しながら、涙を流してくれた。

言葉などなくても、それだけで十分であった。この会社で過ごした時間、苦労した経験、辛かった出来事、それらすべてが、その場で、完全に報われた気がした。

大切なその似顔絵、今はクローゼットにそっとしまってある。部屋に飾りたいのは山々だが、何とも照れくさくて出来ないでいる・・・。
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退職にあたって同僚の皆様が多くを語ることはなかったようですが、退職祝いとしての似顔絵に、その気持ちを込めたんですよね。だからこそ、心に響いたんですよね。

明確な言葉にすることはなくとも、似顔絵に気持ちを込めて、しっかりと伝えることが出来る・・・。

ここでも似顔絵の不思議な効力が発揮されたようですね。本当に似顔絵って素晴らしいですね。

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